2011年1月20日木曜日

絞り

金型で扱われる作業の一つに、「絞り」という技術があるという。
「絞る」、と聞くと普通はぞうきんであったり、生ジュースであったりを連想してしまうのだが、こちらの絞りはかなり硬質である。
 
タバコを吸われる方にはなじみの深い、ライター。
そのなかでも、ジッポライターと言われるもの。
外側が鉄で出来ていて、中に油を注いで置いて、カシャッと開くと火がつくというものだ。
 
ライターと、絞るという言葉がどうにも結びつかなかった。
 
どういうことなのだろう?
まず、一枚の鉄が金型によって深い器のように変形する。
つまり、そのものの質量は変えずに、引き延ばす。
表面積が一度の加工で圧倒的に広がる。
 
さらに、その器状のものを、深くする。
そのためには別の金型が必要になる。
さらに深める。もう一度。
私が教えて頂いた絞りの工法では、少なくとも4回は絞る。
オレンジで同じようなことをしたら、おそらく皮がパリッパリになっているだろう。
 
一番不思議だったのが、何故割れてしまわないのだろうか、ということだった。
鉄の強度、絞りの角度、全てが計算されている。
 
その中でも、特に角度の強い部分はやはり若干のゆがみが生じることもあるらしい。
そのゆがみを修正し、つるっつるのライターに仕上げていく。
絞りは、絞りっぱなしでは絞りにならないのだ。
 
目が、届く。
手で感触を確かめる。
あらゆる角度から、のぞく。
もう一度、確かめる。
 
何気ないことの中に、絞りを絞りたらしめることが在る。
 
金型で、絞り、
五感で、絞る。
 
 
 
 

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